昔むかしのこと。フランスのある町に、三人の娘を持つ商人がいました。 從前從前,在法國的一個城鎮上,有個擁有三個女兒的商人。
ある冬、遠くの町へ出かけなければならなくなった商人は、娘たちを集めて言いました。 某個冬天,商人必需外出到遠方的城市,聚集了女兒們對她們說。
「おみやげは何にしよう。欲しいものを言ってごらん(~てみなさい)」 「買些什麼禮物。說說看想要的東西吧」
「ダイアモンドのネックレス (necklace) が欲しいわ。新年のパーティにつけて行きたいの」 「希望是鑽石的首飾哪。想帶著去新年的派對啊」 上の娘がねだります。 大女兒死皮賴臉地要求。 (ねだる [強請る] <他動五> (ねだって) 死皮賴臉地要求。)
「わたしには絹のドレスを。思いっきりお洒落な形のものにしてね」 「我要絹絲的洋裝。下定決心要打扮得漂漂亮亮的」 二番目の娘が言いました。 第二個女兒說。
「おまえは? 何が欲しい?」 「妳呢? 想要什麼?」 默っている末娘に、商人は尋ねます。 最小的女兒沉默著,商人問她。
「赤いバラの花を見つけたら、ひとつだけお土産にしてください」 「如果發現了紅色玫瑰的話,請摘一朵做為禮物吧」 末(すえ)娘(むすめ)のベラが答えると、商人は笑いました。 最小的女兒貝拉回答後,商人笑了起來。
「なんとつつましい。宝石もドレスも欲しくないのかい」 「居然這麼節儉。不想要珠寶和洋裝嗎?」
「お土産よりも、お父さんが無事に帰ってきてくださる方が、わたしには嬉しいわ」 「比較起禮物,父親平安無事地回來這件事,我就覺得高興了啊」 胸のおくで、ベラはつぶやきました。 在心中,貝拉自言語著。
仕事をすませ、ふたりの娘へのお土産も買った商人は、帰り道をたどっていました。 工作完成,商人也買了兩個女兒的禮物,正尋著回程的道路。 (たどる <自動五> (たどって) 1. 邊走邊找 2. 追尋;追溯;探索 3. 走向。)
「なんと見事なバラだろう」 「居然有這麼漂亮的玫瑰啊!」 目にとまったのはバラの花(はな)園(ぞの)です。 看到的是玫瑰的花園。
何千ともしれない深紅のバラが、ゆたかに咲き誇っていました。 幾千種不為人知的深紅的玫瑰,正豐富地盛開著。
「ベラの土産にしよう」 「給貝拉的禮物」 商人は思わず手をのばし、バラをひとつ取りました。 商人不加思索地伸出手,摘一朵給貝拉。
「わたしの花を勝手に取るな!」 「不要隨便摘我的花!」
とたんに恐ろしい声が響いて、現れたのは野獣です。 響起了可怕的聲音的同時,野獸出現了。
「許してください。娘への土産にしたかったのです、お代(だい)は払います」 「請原諒我。因為要作為女兒的禮物,我付錢。」
鋭く光る目でにらみつけられ、長く伸びた牙を突きつけられて、商人は震え上がりました。 銳利的目光瞪視著、伸出了長而突出的牙,商人顫抖著。
「バラはくれてやる。その代わりに、お前の娘を一人もらおうじゃないか」 「給你玫瑰。交換的是,給我你的一個女兒吧」 野獣が言います。 野獸說。
「わかりました。家に戻って娘たちと相談をします」 「我知道了。回家之後和女兒們商量」
「娘をよこさなかったら、お前を殺す。わかったな」 「不把女兒送來的話,就殺了你。知道嗎」 (よこす <他動五> (よこして) 1. 寄來;送來;遞給 2. ~てよこす 書いてよこす 寫給~、送ってよこす 送來;寄來。)
「わかりました」 「我知道了」 商人は答えて、野獣から逃げ出しました。 商人回答了,從野獸那邊逃了出來。
「ベラが行けばいいのよ。野獣に食われるかもしれないし、八(や)つ裂(ざ)きにされるかもしれないけど、そんなこと知ったこちゃいないわ」 「如果讓貝拉去的話好嗎。野獸也許會吃掉她,或許會被撕碎,會發生什麼事也不知道啊」
「そうよ。バラを強請(ねだ)ったのはベラなんだもの、わたしたちが行くことはないわ」 「是啊,再說是玫瑰是貝拉強求的東西,我們不要去啦!」
商人の話を聞くと、姉さんたちは言いました。 聽了商人的話之後,姊姊們說。
「わたしが行きます。どんなにひどい目に会おうと構(かま)いません」 「我去吧。無論遇到任何悲慘的事也沒關係」
ベラはきっぱりと言い、すぐに旅(たび)支(じ)度(たく)をととのえました。 貝拉堅決的說,立刻準備出發吧。 (たびじたく [旅支度] 旅行的事、ととのえる [整える・調える] 1. 整理;使整齊 2. 備齊;準備好 3. 談妥;達成 <自動> 整う・調う。)
バラの花園があるというところまで、ひとりで馬を走らせたのです。 到達玫瑰花園之前,一個人騎著馬。
花園の奥には、立派な城がありました。 在花園的深處,有一位氣派的城堡。
「よくきてくれたな」 「來了就好」 ベラを迎えた野獣は、城を案内します。 野獸迎接著貝拉,引領著到城堡裡。
いくつもの部屋は美しく飾られ、かぐわしい香りがただよっていました。 被許多飾物裝飾的房間,散發著芳香。 (ただよう [漂う] <自動五> (ただよって) 1. 漂;漂蕩;漂流 2. 洋溢;充滿 3. 漂香;散發。)
どこからともなく音楽が聞こえてきます。 到處都聽得到音樂。
庭には大理石で作られた噴水があり、手入れの行き届いた花園もありました。 庭院裡有大理石做的噴水池,還有精緻養護的花園。
「ここがあなたの部屋です。必要なものはすべて整えたつもりですが、足りないものや欲しいものがあれば何なりと言ってください」 「這裡是你的房間。當做是整理了全部必需的東西,但如果有不足或想要的任何東西,請說」
見たこともないほど広く美しい部屋に入って、野獣は言います。 進到從來不曾見過的,如此寬廣又美麗的房間後,野獸這麼說。
ベラは息をのんで見とれました。 貝拉看得入迷,忘了呼吸了。
優雅な形の家具、さまざまの楽器、色とりどりのドレスや下着や靴、宝石箱にぎっしりと詰められたアクセサリー、書棚には本が並び、テーブルには食事の用意がしてあります。 優雅的家具,各式各樣的樂器,色彩繽紛的禮服、內衣和鞋子,寶箱裡滿滿的配件首飾,書架上排列著書本,餐桌上準備了食物。
足りないものなどひとつもありませんでした。 不夠的東西一個也沒有。
ベラは、城での暮らしを楽しみました。召し使いひとりいないのに、城のすみずみまでがいつもきれいに磨(み)きたてられ、脱いだドレスも取り出した本も、いつのまにか片(かた)付(づ)いています。おなかがすいたと思えば、テーブルにごちそうが並びなした。 貝拉享受著住在城堡裡的生活。明明沒有傭人,城中四處總是打磨的光鮮漂亮,脫下的禮服啦、取出的書本啦,不知何時被整理了。覺得肚子餓的話,在桌上排列了美食。
「あなたはなんと優しいかたでしょう、そして不思議だわ」 「你居然如此的溫柔,真是不可思議啊」 食事をともにして、ひどい手来る音楽にうっとりしながら、ベラは野獣に言うのでした。
「わたしの暮らしは、おとぎ話みたいに楽しいわ」
「わたしが恐ろしくないのか」
野獣がたずねると、ベラは正直に答えました。
「はじめは恐ろしいと思いました。でも今では、あなたほど良い方はいないと思っています。みかけだけで恐ろしがっていたわたしが恥ずかしいわ」
「もしもわたしが、あなたに結婚を申しこんだらどうする?」
思いがけない言葉に、ベラは立ちすくみました。
野獣はベラと食事をとり、本を読み、楽器をかなでました。けれども夜になれば、自分の部屋に引きこもったのです。
「結婚は、ベッドをともにして、あなたの腕の中で眠ることです。許してください、わたしにはまだ、そうする勇気がありません」
「あなたは正直だ」
悲しげな顔で、野獣はベラを見ます。
「醜く、恐ろしい姿のわたしと結婚する勇気はなくてあたりまえだよ。でもわかってくれ。わたしはあなたが好きだ」
「わたしもだわ。あなたが大好きです。だからきっと、結婚する勇気も持てるようになるでしょう。もう少し待ってください」
「待とう。いくらでも待とう」
野獣が言いました。
春が過ぎ、夏も終わりかけたころ、ベラに手紙が届きました。
野獣の城に行った娘が心配のあまり、お父さんが病気になったというのです。
「どうか家に帰らせてください。わたしがどんなに元気か、父に見せてやりたいのです。どんなに幸せか、姉たちに話してやりたいのです」
ベラの願いを、野獣は快く聞き入れました。
立派な馬車が用意され、山のようなみやげ物が積み込まれます。
「あなたの帰りを、わたしはいつまでも持っている」
馬車に乗り込んだベラに、野獣は言いました。低い、寂しげな声でした。
ベラの姿を見て話を聞いて、お父さんは喜びましたが、姉さんたちは嫉妬に狂いました。やつれはて、傷だらけになっているに違いないと思ったのに、妺は肌も髪の毛のややかになり、瞳はきらきらしています。
身に着けているドレスは姉さんたちよりもずっと美しく、宝石はずっと高価なものばかりでした。その上にいくつもの袋につめこんだ金貨や何ダースもの絹織物、珍しい打ものや菓子まで、ベラは持ってきたのです。
「野獣は見るからに恐ろしく、醜い姿をしています。でも心は気高くて優しいの。わたしを愛してくれて、わたしも野獣を愛しているのよ」
きっばりと言うベラを、姉さんたちは軽蔑のまなざしで見つめました。
「あなたの気が知れないわ。化け物を愛するなんて信じられない」
「あなたが式になって愛しているのは、賛沢な暮らしなのよ。野獣に与えられた部屋やドレスや宝石に目がくらんでいるんだわ」
ベラは黙って、唇を嚙みます。家族がいて友だちにも会える生活に戻ってみると、野獣とともに過ぎす城は遠い夢のようでした。
もう一日、まだ一日と、ベラは町での暮らしを引き伸ばしました。
友だちと音楽会に行ったり、レストランでにぎやかに食事をしたり、若者たちも交えてのダンスパーティに出たり買い物をしたり料理を楽しんだりする娘らしい生活は、野獣しかいないふしぎで賛沢な城とは別の喜びがあったのです。
ある夜更けのこと、ベラは夢を見ました。噴水がある庭に、野獣がいます。青ざめてやせ衰えた野獣は、炎のように熱い声で叫んでいました。
「帰ってきてくれ、ベラ。あなたがいない城は寂しい。ひとりで過ごすときはうつろで、生きている気もしない」
「行きます。わたしは今すぐに、あなたのところへ戻りますわ」
答えて、ベラ目を覚ましました。
「お父さんに姉さんたちがいるし、仲間もたくさんいる。姉さんたちにだって友たちがたくさんいるし恋人たっている。でも野獣には、このわたししかいないんだわ」
ベラのほおに涙があふれました。この世でめぐり合ったたった一人の人として、野獣はベラを愛してくれているしベラも野獣を愛していることに気づいたのです。
城に戻ったベラは、まっしぐらに庭に走りこみました。夢のとおりです。
野獣は力なくうずくまって、顔中を涙でぬらしていました。何日も何日もベラを思うだけで、食べ物も飲み物も口にできなかった野獣は弱りきっていました。
「どうか死なないで下さい。力を取り戻して、わたしと結婚してください、お願い!」 ベラは野獣を抱きしめて叫びました。
「あなたがどれほど醜くても、どれほど恐ろしい姿おしていても、愛しています。ありのままのあなたが、見えるがままのあなたがおお好きです」
とたんに、野獣はすっくりと立ち上がりました。
四本の足を地面につけなければ歩けなかった姿が変わって行ったのです。
ベラはあっけにとられて野獣を見守りました。
夜明けの清らかな光が、あたりを満たします。
光の中に、すらりとした姿の若者がいました。
「あなたが……」
口ごもるベラを、若者が優しく見つめます。
「そう。わたしが野獣だ。長いあいだ、悪い魔法にかけられていた」
若者は、城に住む王子だったのです。わがままで世間知らずだった王子は、一夜の宿を求めた老婆を容赦もなく追い払いました。
「もう一人の人を思う喜びと苦しみを知り、もう一人の人から愛される者になるまで、野獣姿でいるがいい」
老婆は言い、そのときから王子は醜い姿になりはてたのです。
王子がかけれた魔法は、ひとすじ縄ではいかないものでした。
ただの魔法ならひとりの力で解くことができます。
野獣にされた王子は、わがままな心を入れ替えて情けを分けてやれる人になりました。
でもそれだけでは、もとの姿に戻ることができなかったのです。
魔法を解くためには、誰かに愛してもらわなければなりません。
「醜く恐ろしい顔と、四本の足を使わなければ歩けない野獣を、誰が愛してくれるだろう……わたしは絶望にかられて城に閉じこもった。長い長いあいだ、望みのかけらも持てなかったのだ」
魔法を解いたのはベラの愛だったのです。「ありがとう」王子は言いました。
それから間もなく、城では盛大きな結婚式があげられました。
王子が野獣に変えられたとき、顔や体を消されてしまった召し使いたちが姿を取り戻して、城はにぎやかで楽しいところになりました。
ベラは王子に寄り添い、王子はベラに寄り添って、ふたりは一生幸せに暮らしたと言うことです。
ある冬、遠くの町へ出かけなければならなくなった商人は、娘たちを集めて言いました。 某個冬天,商人必需外出到遠方的城市,聚集了女兒們對她們說。
「おみやげは何にしよう。欲しいものを言ってごらん(~てみなさい)」 「買些什麼禮物。說說看想要的東西吧」
「ダイアモンドのネックレス (necklace) が欲しいわ。新年のパーティにつけて行きたいの」 「希望是鑽石的首飾哪。想帶著去新年的派對啊」 上の娘がねだります。 大女兒死皮賴臉地要求。 (ねだる [強請る] <他動五> (ねだって) 死皮賴臉地要求。)
「わたしには絹のドレスを。思いっきりお洒落な形のものにしてね」 「我要絹絲的洋裝。下定決心要打扮得漂漂亮亮的」 二番目の娘が言いました。 第二個女兒說。
「おまえは? 何が欲しい?」 「妳呢? 想要什麼?」 默っている末娘に、商人は尋ねます。 最小的女兒沉默著,商人問她。
「赤いバラの花を見つけたら、ひとつだけお土産にしてください」 「如果發現了紅色玫瑰的話,請摘一朵做為禮物吧」 末(すえ)娘(むすめ)のベラが答えると、商人は笑いました。 最小的女兒貝拉回答後,商人笑了起來。
「なんとつつましい。宝石もドレスも欲しくないのかい」 「居然這麼節儉。不想要珠寶和洋裝嗎?」
「お土産よりも、お父さんが無事に帰ってきてくださる方が、わたしには嬉しいわ」 「比較起禮物,父親平安無事地回來這件事,我就覺得高興了啊」 胸のおくで、ベラはつぶやきました。 在心中,貝拉自言語著。
仕事をすませ、ふたりの娘へのお土産も買った商人は、帰り道をたどっていました。 工作完成,商人也買了兩個女兒的禮物,正尋著回程的道路。 (たどる <自動五> (たどって) 1. 邊走邊找 2. 追尋;追溯;探索 3. 走向。)
「なんと見事なバラだろう」 「居然有這麼漂亮的玫瑰啊!」 目にとまったのはバラの花(はな)園(ぞの)です。 看到的是玫瑰的花園。
何千ともしれない深紅のバラが、ゆたかに咲き誇っていました。 幾千種不為人知的深紅的玫瑰,正豐富地盛開著。
「ベラの土産にしよう」 「給貝拉的禮物」 商人は思わず手をのばし、バラをひとつ取りました。 商人不加思索地伸出手,摘一朵給貝拉。
「わたしの花を勝手に取るな!」 「不要隨便摘我的花!」
とたんに恐ろしい声が響いて、現れたのは野獣です。 響起了可怕的聲音的同時,野獸出現了。
「許してください。娘への土産にしたかったのです、お代(だい)は払います」 「請原諒我。因為要作為女兒的禮物,我付錢。」
鋭く光る目でにらみつけられ、長く伸びた牙を突きつけられて、商人は震え上がりました。 銳利的目光瞪視著、伸出了長而突出的牙,商人顫抖著。
「バラはくれてやる。その代わりに、お前の娘を一人もらおうじゃないか」 「給你玫瑰。交換的是,給我你的一個女兒吧」 野獣が言います。 野獸說。
「わかりました。家に戻って娘たちと相談をします」 「我知道了。回家之後和女兒們商量」
「娘をよこさなかったら、お前を殺す。わかったな」 「不把女兒送來的話,就殺了你。知道嗎」 (よこす <他動五> (よこして) 1. 寄來;送來;遞給 2. ~てよこす 書いてよこす 寫給~、送ってよこす 送來;寄來。)
「わかりました」 「我知道了」 商人は答えて、野獣から逃げ出しました。 商人回答了,從野獸那邊逃了出來。
「ベラが行けばいいのよ。野獣に食われるかもしれないし、八(や)つ裂(ざ)きにされるかもしれないけど、そんなこと知ったこちゃいないわ」 「如果讓貝拉去的話好嗎。野獸也許會吃掉她,或許會被撕碎,會發生什麼事也不知道啊」
「そうよ。バラを強請(ねだ)ったのはベラなんだもの、わたしたちが行くことはないわ」 「是啊,再說是玫瑰是貝拉強求的東西,我們不要去啦!」
商人の話を聞くと、姉さんたちは言いました。 聽了商人的話之後,姊姊們說。
「わたしが行きます。どんなにひどい目に会おうと構(かま)いません」 「我去吧。無論遇到任何悲慘的事也沒關係」
ベラはきっぱりと言い、すぐに旅(たび)支(じ)度(たく)をととのえました。 貝拉堅決的說,立刻準備出發吧。 (たびじたく [旅支度] 旅行的事、ととのえる [整える・調える] 1. 整理;使整齊 2. 備齊;準備好 3. 談妥;達成 <自動> 整う・調う。)
バラの花園があるというところまで、ひとりで馬を走らせたのです。 到達玫瑰花園之前,一個人騎著馬。
花園の奥には、立派な城がありました。 在花園的深處,有一位氣派的城堡。
「よくきてくれたな」 「來了就好」 ベラを迎えた野獣は、城を案内します。 野獸迎接著貝拉,引領著到城堡裡。
いくつもの部屋は美しく飾られ、かぐわしい香りがただよっていました。 被許多飾物裝飾的房間,散發著芳香。 (ただよう [漂う] <自動五> (ただよって) 1. 漂;漂蕩;漂流 2. 洋溢;充滿 3. 漂香;散發。)
どこからともなく音楽が聞こえてきます。 到處都聽得到音樂。
庭には大理石で作られた噴水があり、手入れの行き届いた花園もありました。 庭院裡有大理石做的噴水池,還有精緻養護的花園。
「ここがあなたの部屋です。必要なものはすべて整えたつもりですが、足りないものや欲しいものがあれば何なりと言ってください」 「這裡是你的房間。當做是整理了全部必需的東西,但如果有不足或想要的任何東西,請說」
見たこともないほど広く美しい部屋に入って、野獣は言います。 進到從來不曾見過的,如此寬廣又美麗的房間後,野獸這麼說。
ベラは息をのんで見とれました。 貝拉看得入迷,忘了呼吸了。
優雅な形の家具、さまざまの楽器、色とりどりのドレスや下着や靴、宝石箱にぎっしりと詰められたアクセサリー、書棚には本が並び、テーブルには食事の用意がしてあります。 優雅的家具,各式各樣的樂器,色彩繽紛的禮服、內衣和鞋子,寶箱裡滿滿的配件首飾,書架上排列著書本,餐桌上準備了食物。
足りないものなどひとつもありませんでした。 不夠的東西一個也沒有。
ベラは、城での暮らしを楽しみました。召し使いひとりいないのに、城のすみずみまでがいつもきれいに磨(み)きたてられ、脱いだドレスも取り出した本も、いつのまにか片(かた)付(づ)いています。おなかがすいたと思えば、テーブルにごちそうが並びなした。 貝拉享受著住在城堡裡的生活。明明沒有傭人,城中四處總是打磨的光鮮漂亮,脫下的禮服啦、取出的書本啦,不知何時被整理了。覺得肚子餓的話,在桌上排列了美食。
「あなたはなんと優しいかたでしょう、そして不思議だわ」 「你居然如此的溫柔,真是不可思議啊」 食事をともにして、ひどい手来る音楽にうっとりしながら、ベラは野獣に言うのでした。
「わたしの暮らしは、おとぎ話みたいに楽しいわ」
「わたしが恐ろしくないのか」
野獣がたずねると、ベラは正直に答えました。
「はじめは恐ろしいと思いました。でも今では、あなたほど良い方はいないと思っています。みかけだけで恐ろしがっていたわたしが恥ずかしいわ」
「もしもわたしが、あなたに結婚を申しこんだらどうする?」
思いがけない言葉に、ベラは立ちすくみました。
野獣はベラと食事をとり、本を読み、楽器をかなでました。けれども夜になれば、自分の部屋に引きこもったのです。
「結婚は、ベッドをともにして、あなたの腕の中で眠ることです。許してください、わたしにはまだ、そうする勇気がありません」
「あなたは正直だ」
悲しげな顔で、野獣はベラを見ます。
「醜く、恐ろしい姿のわたしと結婚する勇気はなくてあたりまえだよ。でもわかってくれ。わたしはあなたが好きだ」
「わたしもだわ。あなたが大好きです。だからきっと、結婚する勇気も持てるようになるでしょう。もう少し待ってください」
「待とう。いくらでも待とう」
野獣が言いました。
春が過ぎ、夏も終わりかけたころ、ベラに手紙が届きました。
野獣の城に行った娘が心配のあまり、お父さんが病気になったというのです。
「どうか家に帰らせてください。わたしがどんなに元気か、父に見せてやりたいのです。どんなに幸せか、姉たちに話してやりたいのです」
ベラの願いを、野獣は快く聞き入れました。
立派な馬車が用意され、山のようなみやげ物が積み込まれます。
「あなたの帰りを、わたしはいつまでも持っている」
馬車に乗り込んだベラに、野獣は言いました。低い、寂しげな声でした。
ベラの姿を見て話を聞いて、お父さんは喜びましたが、姉さんたちは嫉妬に狂いました。やつれはて、傷だらけになっているに違いないと思ったのに、妺は肌も髪の毛のややかになり、瞳はきらきらしています。
身に着けているドレスは姉さんたちよりもずっと美しく、宝石はずっと高価なものばかりでした。その上にいくつもの袋につめこんだ金貨や何ダースもの絹織物、珍しい打ものや菓子まで、ベラは持ってきたのです。
「野獣は見るからに恐ろしく、醜い姿をしています。でも心は気高くて優しいの。わたしを愛してくれて、わたしも野獣を愛しているのよ」
きっばりと言うベラを、姉さんたちは軽蔑のまなざしで見つめました。
「あなたの気が知れないわ。化け物を愛するなんて信じられない」
「あなたが式になって愛しているのは、賛沢な暮らしなのよ。野獣に与えられた部屋やドレスや宝石に目がくらんでいるんだわ」
ベラは黙って、唇を嚙みます。家族がいて友だちにも会える生活に戻ってみると、野獣とともに過ぎす城は遠い夢のようでした。
もう一日、まだ一日と、ベラは町での暮らしを引き伸ばしました。
友だちと音楽会に行ったり、レストランでにぎやかに食事をしたり、若者たちも交えてのダンスパーティに出たり買い物をしたり料理を楽しんだりする娘らしい生活は、野獣しかいないふしぎで賛沢な城とは別の喜びがあったのです。
ある夜更けのこと、ベラは夢を見ました。噴水がある庭に、野獣がいます。青ざめてやせ衰えた野獣は、炎のように熱い声で叫んでいました。
「帰ってきてくれ、ベラ。あなたがいない城は寂しい。ひとりで過ごすときはうつろで、生きている気もしない」
「行きます。わたしは今すぐに、あなたのところへ戻りますわ」
答えて、ベラ目を覚ましました。
「お父さんに姉さんたちがいるし、仲間もたくさんいる。姉さんたちにだって友たちがたくさんいるし恋人たっている。でも野獣には、このわたししかいないんだわ」
ベラのほおに涙があふれました。この世でめぐり合ったたった一人の人として、野獣はベラを愛してくれているしベラも野獣を愛していることに気づいたのです。
城に戻ったベラは、まっしぐらに庭に走りこみました。夢のとおりです。
野獣は力なくうずくまって、顔中を涙でぬらしていました。何日も何日もベラを思うだけで、食べ物も飲み物も口にできなかった野獣は弱りきっていました。
「どうか死なないで下さい。力を取り戻して、わたしと結婚してください、お願い!」 ベラは野獣を抱きしめて叫びました。
「あなたがどれほど醜くても、どれほど恐ろしい姿おしていても、愛しています。ありのままのあなたが、見えるがままのあなたがおお好きです」
とたんに、野獣はすっくりと立ち上がりました。
四本の足を地面につけなければ歩けなかった姿が変わって行ったのです。
ベラはあっけにとられて野獣を見守りました。
夜明けの清らかな光が、あたりを満たします。
光の中に、すらりとした姿の若者がいました。
「あなたが……」
口ごもるベラを、若者が優しく見つめます。
「そう。わたしが野獣だ。長いあいだ、悪い魔法にかけられていた」
若者は、城に住む王子だったのです。わがままで世間知らずだった王子は、一夜の宿を求めた老婆を容赦もなく追い払いました。
「もう一人の人を思う喜びと苦しみを知り、もう一人の人から愛される者になるまで、野獣姿でいるがいい」
老婆は言い、そのときから王子は醜い姿になりはてたのです。
王子がかけれた魔法は、ひとすじ縄ではいかないものでした。
ただの魔法ならひとりの力で解くことができます。
野獣にされた王子は、わがままな心を入れ替えて情けを分けてやれる人になりました。
でもそれだけでは、もとの姿に戻ることができなかったのです。
魔法を解くためには、誰かに愛してもらわなければなりません。
「醜く恐ろしい顔と、四本の足を使わなければ歩けない野獣を、誰が愛してくれるだろう……わたしは絶望にかられて城に閉じこもった。長い長いあいだ、望みのかけらも持てなかったのだ」
魔法を解いたのはベラの愛だったのです。「ありがとう」王子は言いました。
それから間もなく、城では盛大きな結婚式があげられました。
王子が野獣に変えられたとき、顔や体を消されてしまった召し使いたちが姿を取り戻して、城はにぎやかで楽しいところになりました。
ベラは王子に寄り添い、王子はベラに寄り添って、ふたりは一生幸せに暮らしたと言うことです。
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